映画界、特に特撮界にとって1977年という年はエライコッチャな年でした。
そう、STAR WARS が公開されたのです。
（日本公開は翌1978年）
それまでSF映画（STAR WARSをSFに分類するのが嫌なら宇宙モノと言ってもいいですが）というのは 2001年宇宙の旅 とか 惑星ソラリス など一部を覗いてはキワモノ、子供向け、低予算、B級などという扱いだったわけですが、それがこんなに当たってしまったものだから、あちこちで宇宙モノが作られるようになりました。
ですが、その殆どがやっぱりキワモノ、子供向け、低予算、B級でしたｗ
作る側が STAR WARS の何がウケたのかさっぱり理解してなかったのですｗｗ
今回ご紹介するのは、そういうダメダメな作品の１つ、東宝作品の「惑星大戦争です」
もうタイトルからして STAR WARS の直訳なわけでｗ
（この惑星大戦争というタイトルは本家STAR WARSの邦題になる予定だったというトリビアもあるのですが、それはここでは割愛）
この映画は1977年の公開です。
そう、STAR WARS の日本公開前です。
おい、アメリカでSTAR WARSってのが大当たりしてるらしいで、うちもそういうの作ったら儲かるに違いない、本家が来る前に作って公開してまえ！
と言ったかどうか知りませんが、製作期間たったの２ヶ月、撮影期間に至ってはなんと３週間でやっつけたのがこの映画です。
たぶん製作サイドは誰一人STAR WARSを見てませんｗ
設定もストーリーもSTAR WARSとは一切類似性がありません。
むしろ宇宙戦艦ヤマトに似ています。
この東宝の「惑星大戦争」に対して東映は「宇宙からのメッセージ」というこれもまたクソな映画を作るのですが、それはまた別の機会にｗ
では画像をふんだんに使ってこの「惑星大戦争」にツッコミを入れていきましょう。
今回の記事は長いよｗ
国連宇宙ナンチャラという機関の日本支部です。
1977年という時代を考慮してもこのメカはダサいｗ
ちなみに劇中の時代設定は1980年です。なんて中途半端な未来！
NASAの研究によると地球は謎の異星人の脅威にさらされているそうです。
森田健作が主人公です。NASAに出向だかしていたようで、日本に帰ってきました。
ヒロインは浅野ゆう子です。国連宇宙ナントカの研究員みたいです。
沖雅也も国連宇宙ナントカの職員で、浅野ゆう子と婚約しています。
ですが、浅野ゆう子は本当は森田健作が好きなんだそうです。
森田健作がNASAに行ってしまったので仕方なく沖雅也と婚約したのだそうで。
なんじゃそら。
宇宙ステーションで何か異常があった模様。
どうみても絵なんですけど。
ミニチュア作る予算や時間が無かったのでしょうか。
ステーションの職員が何かを発見しました。
「大きい！すごく大きいです！ローマ船！」
と謎のメッセージを残して通信が途絶えました。
土産物屋で買ってきた土鈴、ではなくて異星人のUFOです。
ただし劇中ではロケットと呼称されています。
こいつが世界各地にあらわれて都市を攻撃、破壊していきます。
こんなこともあろうかと、日本では迎撃用の宇宙戦艦、轟天号を建造していました。
宇宙戦艦なのになぜ先端がドリルなのかは不明です。
もちろん轟天号と言えば先端はドリルに決まっているわけですが。
ここで少し脱線。
轟天号という名の戦艦はこれまでに３つの映画に登場しています（アニメ作品を除く）。
最初が「海底軍艦」
次がこの「惑星大戦争」
そして３つ目が「ゴジラ FINAL WARS」です。
轟天号ファンも少なからずいますし、東宝としては超兵器＝轟天号というのは当然の選択なのかもしれません。
例えドリルが意味不明でもｗ
さて、この轟天号には何か秘密があるらしく、異星人もそれを探るべく地球人に化けて設計者である池部良に接触したりします。
池部良は浅野ゆう子の父親という設定です。
異星人はよっぽど轟天号が怖いらしく、轟天号を建造している秘密基地を攻撃してきます。
工作員の潜入を許してしまったりもしますが、あっけなく片付けて、轟天号発進！
煙をモクモク吐きながら宇宙空間を進みます。
艦長は設計者でもある池部良。
森田健作、沖雅也、娘である浅野ゆう子も搭乗しています。
搭乗員はなんとなくヤマトの乗組員のような格好をしていますが、
ヘルメットを被ると2001年宇宙の旅のようでもあります。
俺がもし死んだら婚約者の浅野ゆう子を頼む、などと沖雅也がフラグを立てまくります。
「おっきなローマ船！」などと意味不明な通信を最後に音信不通だった宇宙ステーションが破壊されているのを発見、遺体を収容します。
と思ったら、そいつは宇宙ステーション搭乗員に化けた異星人でした。
化けの皮が剥がれるとそこにはお約束の緑色の皮膚が！
浅野ゆう子を人質にして「轟天号を止めろ」と要求します。
どんだけ轟天号が怖いねんお前ら。
「轟天号を止めろ」と言っておきながら、こいつは浅野ゆう子を連れたまま土産物の土鈴じゃなかったロケットに乗って去って行きます。
それを追う轟天号。
止まれと言われたのに追いかけたら娘の命が危ないんじゃないかと思いますが、艦長の池部良は気にしません。
そこへ敵からの通信が入ります。
なんと浅野ゆう子がエッチな格好させられて獣人に捕まってます！
そして映像が切り替わります。
このローマ兵のコスプレしたような奴が敵の総大将らしいです。
地球から２万２千光年離れたヨミ星系の第三惑星からやって来た、などと聞いてもいないのに自分の星の位置という重要機密をべらべら喋ります。
まあ２万２千光年などという途方も無い距離なら喋っても問題ないのでしょうが。
自分たちの星がそろそろ寿命なので移住可能な地球を占領する、ということらしいです。
皮膚の色といい、地球攻撃の目的といい、どうみてもガミラスですが、気にしないでおきます。
自分たちの事情を一方的に喋るだけ喋ると通信は終わります。
轟天号のクルーは浅野ゆう子のSM衣装とローマ兵のコスプレ見せられただけで何の意味もなかったのですが、観客はこれで設定を一通り聞き終わりました。
轟天号は金星に着陸します。
90気圧、気温460℃のとんでもない過酷な環境であるとコンピュータは言いますが、誰も何も気にしません。
そして敵の戦艦を発見します。
ローマ船でした！まんま古代ローマのガレー船ですが、帆に見えるところは艦橋、オールに見えるのは砲塔です。横にしか撃てません。
すごく大きいです！と宇宙ステーションの人は言ってましたが、轟天号と同じくらいなので驚愕するほどではありません。たぶん大きいミニチュアを作る予算も時間も無かったのでしょう。大きいとミニチュアの操演も大掛かりになって人手もいりますしね。
さて、艦首にあるワシの首のクチバシを見て、池部良艦長はエア・ダクトだ！と言い切ります。
宇宙船にエア・ダクト？
とは誰もつっこまず、内部に潜入するにはあそこから入るしかない！ということになります。
ただし敵艦はバリア（赤いドーム）に守られてるので、バリア攻撃隊と救出隊に分かれることにします。
攻撃隊の隊長は沖雅也です。戦闘機にのって出撃します。
沖雅也の隊長機（手前）はいいのですが、僚機（奥）にはコックピットが見当たりません。
ドローンではないのですが、絵描きさんうっかり描くのを忘れちゃったんでしょうか。
救出隊の隊長は森田健作です。
攻撃隊がなんなくバリアを破壊したので、艦首のエア・ダクトから侵入します。
が、捕まって浅野ゆう子共々牢屋に入れられてしまいます。
おや、上の画像で右上に妙な装置が・・・
なんと牢屋の中にドアのロック装置が！
なんなく解除して脱出成功！轟天号に戻ります。
しかし、同じく轟天号に戻ろうとした沖雅也は敵艦前で180度ターンという油断しすぎな行動を取ったため後ろから撃墜されてしまいます。
それを見て、ひいっ！と悲鳴のようなうめき声のような声を上げる浅野ゆう子
ですが、次のシーンでは何事もなかったようにしています。
婚約者が死んじゃったわけですが、元々大好きだった森田健作がいるから構わないのでしょう。
フラグ立てまくった沖雅也が悪いんです。
生きているクルーが全員轟天号に戻ったところで、戦艦同士の一騎打ちになります。
いくら科学技術が地球よりはるかに進んでいるとはいえ、単艦で乗り込んでくるとは異星人さん地球をナメすぎです。
というかお前ら轟天号にビビってたでしょうに。大丈夫なのか？と心配になります。
お互いに艦砲射撃というまるで日露戦争のような戦いは轟天号勝利に見えたのですが、
ズタボロになった敵艦が強力なビーム兵器を出してきました。
そんなんあるなら最初から使えよ。
轟天号あえなく墜落。
と、池部良艦長が森田健作や浅野ゆう子を残して一人どこかへ行きます。
行き先は艦首のあのドリルでした。
なんとこのドリルは特攻兵器だったのです。
しかもこのドリルには宇宙を構成するエーテルを破壊して銀河そのものまで破壊可能な新型爆弾が積んであるのだそうです。
そんな物騒なものを、しかも艦首に搭載していたとは！
そしてこの爆弾こそが異星人が知りたがり、恐れていた轟天号の秘密だったのです。
そんな超兵器があるのを分かっていて単艦で乗り込んできた異星人の度胸に改めてびっくりです。
と言うか、銀河そのものも破壊可能な爆弾なんか使ったらアカンやろ。
しかし「物質を構成するエーテルを破壊することで銀河をも破壊する」というのは「水中の酸素を破壊することでゴジラを骨に」したオキシジェン・デストロイヤー並に意味不明な兵器ですな。
池部良を載せたままドリル爆弾はまっすぐ敵艦に進んでいきます。
え？まっすぐ？
普通に撃てばよかったんじゃ。何のために艦長は搭乗しているのでしょう・・・
深く考える間もなく、ドリル爆弾を食らった敵艦は大爆発！
と思いきや、わりとしょぼく炎上したまましばらく飛んで、火口に落ちていきました。
そこで金星はなんか刺激をもらったらしくあちこちでどっかんどっかん噴火が起こります。
おとうさまーーーーーーー！！浅野ゆう子が泣き崩れます。
森田健作「大丈夫か」
浅野ゆう子「うん♡」
立ち直り早い。
父親が亡くなっても大好きな森田健作がいるから平気なのでしょう。
轟天号が金星を脱出すると、
金星大爆発。
あーあ、惑星一つ破壊しやがった。
あれ？銀河そのものが破壊されるんじゃなかったっけ？
という疑問を上からたたき潰すように画面いっぱいに
終
の文字が。
余韻も何もなく物語は終わったのでした。
というわけで東宝版STAR WARS「惑星大戦争」でした。
無茶苦茶な映画だとは言え、たった二ヶ月で１本作ってしまう東宝の力はすごいですね。
まだまだツッコミ所のある映画なのですが、次回は別の映画を紹介します^^;
需要はないと思いますがｗ
